宮司挨拶

世界遺産・国宝賀茂御祖神社の文化財修理並びに、国指定史跡糺の森環境・景観保全事業と第三十四回(平成二十七年四月)、式年遷宮事業の進捗状況のご報告
ただいま、進捗中の大事業は、世界遺産・国宝賀茂御祖神社の文化財修理と国指定史跡・糺の森環境・景観の保全事業ならびに、第三十四回・式年遷宮事業とのが重なっておこなわれています。
全ての事業の完了の予定は、平成二十七年(二〇一七)を目標としています。ただ修理事業の都合によって延びることもあります。
事業は、公的な補助をいただいて、おこなう修理あるいは、保全事業と補助の対象外でありながら将来文化財となる歴史的な名所や社殿などを当神社の独自事業として進めています。
今回の大事業を始めて、今年は四年目となります。ご覧の通り長い事業名ですから、関係者は、略して世界遺産・国宝賀茂御祖神社文化財保全事業と呼んでいます。
完了目標の平成二十七年四月は、その年がちょうど伝統の第三十四回目の式年遷宮にあたります。
当神社の創祀は、二千数百年前ですが、過去を振り返ってみますと、二十年ごとにたたずまいの整備や保全が大きな区切りとなって、歴史と文化を守り伝承してまいりました。それゆえ現在は、世界文化遺産として、日本の宝となっています。
平安時代、長元九年(一〇三六)四月十三日、後一条天皇より、二十年に一度、御本宮をはじめ、すべての御社殿を御造替するよう宣旨(せんじ)(天皇の命を伝える公文書。) が発せられ、二十年後の天喜四年(一〇五六) に第一回式年遷宮が御斎行になりました。以来、第十四回、元亨二年(一三二二)十二月二十四日、まで正確に二十年一度の御遷宮が行われてまいりました。が、以降は戦乱や不安定な世が続いて二十年が二十五年になったり、時には、五十年遅延したりするということもありました。そのため、第十九回、永正十二年(一五一五)二月十二日、式年遷宮の日と文久三年(一八三五)五月九日、第二十八回式年遷宮に先だち「遅延の無いよう連続の事と仰せがあったと」御教書(みきょうしょ)(関白等の命を下達した公式の文書。) が二度にわたって発せられた記録があります。
しかしながら、明治時代以降は、今日の文化財保護法の前身、特別保護建造物法によって、御本宮をはじめ、その他の社殿五十五棟が指定されたため、第二十九回、明治二十四年(一八九一)。第三十回、大正三年(一九一四)。第三十一回、昭和十二年(一九三七)までは、国によって文化財の保全対策がおこなわれてまいりました。
新しい憲法の時代になってからは、初めての式年遷宮が昭和四十八年(一九七三)に、この時から全て市民の手によって、伝統を継承していくために第三十二回としておこなわれました。また国宝や重要文化財として指定されている社殿のお屋根の葺き替えと柱などの補修に対して、国庫から五〇パーセントの補助を受けられるようになりました。残額の五〇パーセントと玉垣やお調度の修理、周囲の景観の整備などは、補助の対象外であるため、市民の皆様のご支援によって、当神社の独自事業としてすすめています。
糺の森の環境・景観保全事業も江戸時代末までは、全国各地の社領からの支援で整備がおこなわれていましたが、明治初年からは、今日の市民運動のさきがけのように、下鴨神社神苑保存会が洛中洛外の市民の皆様によって設立され、単に森の自然を守るということだけではなく、太古からの森と人々の生活との関わりの歴史と伝統を守ってきました。今日の公益財団法人・糺の森保全会の前身です。
本年、平成二十二年は、次の事業をおこなっています。
1、国庫補助事業対象の修理工事
重要文化財・摂社・三井神社舞殿。同 重要文化財・棟門 3500万円(補助率五十五パーセント・1575万円)
国宝・重要文化財社殿三一棟防災第三年度分工事 13300万円(補助率五十五パーセント・5985万円)
史跡・糺の森・環境、景観保全整備事業 2000万円(補助率五〇パーセント・1000万円
2、国庫補助金の対象外の修理工事
重要文化財・摂社・三井神社。重要文化財付属・井戸屋形再建
同 瑞垣造替。同 拝所(石葺き仮屋)造替。同 斎庭修景整備。同 調度品造替及び、修理。工事費総計15000万円
鴨社公文所再建工事第二年度分。32000万円
参拝者休所(石葺き仮屋)。2000万円
2、の補助対象外の工事費(平成二十二年度分)合計49000万円は、全国の企業や各地の市民の皆様のご支援により進めております。
本年の史跡糺の森の保全整備は、次の事業をおこなう予定です。
1、 アライグマ被害。ナラ、カシ枯れ(約九〇〇本)被害対策
2、 保存木保全・新規植栽・周辺樹木整備
3、 参道・烏の縄手整備
最近は、様々な社会状況で厳しい経済事情でありますが、二千年の伝統文化を守るため、ぜひご支援、ご協力のほどお願い申し上げます。



