宮司の挨拶

卯の花の咲くころ

H29-05-06 / 215話

実は、既に咲ききって、満開を過ぎて、花のなかには、花びらの色が変わり

かけています。

御手洗の池の堤の両岸は、咲きそろって常の景色を替えています。両岸を白一色に染め、

枝垂れる花色が御手洗川の流れに映えています。

ところが、どうしたことか、烏の縄手の舩島の奈良殿神地の卯の花は、今年も咲きません

でした。

数年前、奈良殿の無社殿神地を整備したとき、植物学者に、

平安時代の『元輔集』に

  四月 神まつるところ

   卯の花の うちみえまよふ ゆうしてゝ けふこそ神を まつるへらなる

鎌倉時代の『如願法師集』に

  社卯花

   ゆうしてに まかふ卯の花 うちなひき 神の齊垣を しるくもあるかな

室町時代の『慕景集』に

  社卯花

   卯の花も けふの祭に あふひ草 月の桂の 色にまされる

などと、詠まれた「卯の花」と同じ花を補植して下さい、とお願いしたところ、御手洗の池の卯の花は、外来種との混合であって、日本の原種とは、ちがう、と仰り自ら植木職人を指導して植栽されたのですが、どうしたことか、花も実も付けなかったのです。先生に咲かない卯の花があるのですか、といじわるを言ってみました。何度か、確かめにお出でになったのですが、残念ながら、ご高齢であったため、咲くところを確かめていただけないでいます。

今年の春先も、気になって、見に行ったところ、卯の花どころか、すっかり刈りとられていました。刈るのは、秋口ですから、と思い疑いつつ、近づいてみると、秋に刈ったのか、今年も、だめ、と思って、植木職が刈り取ってしまったのか、わからずじまい、でした。

おそらく、楽しみにしていただいた方がおいでだろうと思いますので、秋まで待って、状況をみながら、回復を試みたいと思っています。

しばらく、おまちください。